クリスタルと水晶の違い|同じ石を指す場合と、まったく別物の場合
「クリスタル」と「水晶」。同じ石を指していることもあれば、まったく別物を指していることもあります。この言葉のあいまいさが、ガラス製品を天然石として買ってしまう事故の原因になっています。
目次
結論から|3つの「クリスタル」がある
日本語で「クリスタル」と呼ばれるものには、少なくとも3つの意味があります。
| 呼び名 | 正体 | 水晶と同じか |
|---|---|---|
| ロッククリスタル (Rock Crystal) | 無色透明の天然水晶(石英) | 同じもの |
| クリスタルガラス (Lead Crystal) | 酸化鉛を加えた人工ガラス | まったく別物 |
| クリスタル(結晶) | 原子が規則正しく並んだ固体全般の総称 | 水晶はその一種 |
つまり「クリスタル=水晶」が成り立つのは、ロッククリスタルを指しているときだけです。食器売り場やシャンデリアの「クリスタル」は、鉱物ではなくガラスです。
なぜ紛らわしくなったのか
crystalの語源はギリシャ語のkrystallos(氷)です。古代ギリシャでは、水晶は溶けない永久の氷だと考えられていました。この語がやがて「透明で美しい固体」全般を指すようになり、18世紀のイギリスで発明された鉛入りガラスにも、水晶に似た輝きを持つという理由で「クリスタル」の名が与えられました。
一方、鉱物学が発展すると、crystalは「結晶」という学術用語としても使われるようになります。この意味では岩塩も砂糖も、原子が規則正しく並んでいればクリスタルです。ひとつの単語に、天然石・ガラス・学術用語の3つの用法が同居してしまったわけです。
天然水晶とクリスタルガラスの見分け方
見た目だけでは判断が難しいことがありますが、以下の方法で高い確率で見分けられます。
1. 温度を確かめる
頬に当てたとき、天然水晶はひんやりと冷たく、なかなか温まりません。石英は熱伝導率が高く、体温を奪い続けるためです。ガラスはすぐに肌の温度になじみます。もっとも手軽で、実用的な方法です。
2. 気泡を探す
ルーペで内部を覗きます。まん丸の気泡が見えたらガラスです。溶けた液体が固まるときにできるもので、天然の水晶には生じません。天然水晶の内包物は、針状・板状・不定形の鉱物や、液体を含む細長い管(インクルージョン)です。
3. 硬さで判定する
水晶はモース硬度7、ガラスは5〜6です。目立たない場所を鋼のやすりや石英片でこすったとき、傷がつけばガラスの可能性が高いといえます。ただし標本を傷つけるため、最後の手段です。
4. 重さを比べる
鉛を含むクリスタルガラスは比重が重く(2.9〜3.1)、水晶(2.65)より手にずしりときます。逆に鉛を含まない普通のガラス(2.5前後)は軽く感じます。同じ大きさの品を並べられる状況なら有効です。
5. 光の分かれ方を見る
水晶は複屈折を示す鉱物です。厚みのある透明な部分を通して細い線を見ると、わずかに二重に見えることがあります。ガラスは等方性なので、この現象は起きません。
「水晶」と呼べる範囲
鉱物としての水晶は石英(quartz)のうち、目に見える結晶の形に育ったものを指す呼び名です。
- 石英/SiO2という鉱物種の名前。地殻にありふれた成分で、砂粒の多くもこれです。
- 水晶/石英が六角柱の自形結晶に育ったもの。無色透明のものを特にロッククリスタルと呼びます。
- アメジスト・シトリン・ローズクォーツ/いずれも石英の色変種。鉱物としては水晶と同じSiO2です。
したがって「アメジストは水晶ですか」という問いの答えは、はいです。紫水晶という和名がそのまま示しています。
買うときに気をつけたい表示
- 「クリスタル」とだけ書かれている/天然か人工かが不明です。売り手に「ロッククリスタルですか、ガラスですか」と直接確認してください。
- 「クリスタルガラス」「レッドクリスタル」「オーストリアンクリスタル」/いずれもガラス製品です。装飾品としての価値は別として、天然石ではありません。
- 「天然水晶」「ロッククリスタル」/鉱物としての水晶を指します。
- 極端に安く、大きく、完全に無傷/天然水晶にしては条件が良すぎる場合、人工水晶(合成クォーツ)かガラスを疑う余地があります。
この記事に出てくる鉱物
よくある質問
クリスタルと水晶は同じものですか?
文脈によります。ロッククリスタル(Rock Crystal)と書かれていれば無色透明の天然水晶そのものですが、食器やシャンデリアの「クリスタル」は酸化鉛を加えた人工のガラスで、鉱物ではありません。
クリスタルガラスと天然水晶はどう見分けますか?
頬に当てて温度を確かめる方法が手軽です。天然水晶はひんやりと冷たく、なかなか温まりません。またルーペで内部を覗いて丸い気泡が見えれば、それはガラスです。天然の水晶に球形の気泡は生じません。
アメジストは水晶に含まれますか?
含まれます。アメジストは石英(SiO₂)が紫色に発色したもので、和名も紫水晶です。シトリン(黄水晶)、ローズクォーツ(紅水晶)も同じく水晶の色変種です。
石英と水晶の違いは何ですか?
石英はSiO₂という鉱物種の名前で、水晶はそのうち六角柱の結晶形に育ったものを指す呼び名です。砂粒の多くも成分は石英ですが、結晶の形をしていないため水晶とは呼びません。
クリスタルガラスのほうが水晶より重いのはなぜですか?
酸化鉛を20〜30%ほど含むためです。比重は2.9〜3.1程度で、水晶の2.65より重くなります。鉛を加えるのは屈折率を上げて輝きを強くするためで、この重さと輝きがクリスタルガラスの特徴です。